file.386;『始まりを失くした国に生きる命』  /  オリジナルストーリー「ZERO」アナザーストーリー抜粋


20061106


        "何もない。けれど、何かが生まれる可能性"

        此の国の僻地を旅して巡る一族の総称。
        此の国に現れた歴代の女神を崇め、信仰を守る一族の総称。
        此の国に於いて、最初に認識される数字。
        此の国の始まりを示すことの出来る(タダ)一つの言葉。
        人の始まりがある場所。
        人の終わりが還る場所。

      【ゼロ】とは、この国の創始の名。
        ――ゼロ・ザ・ロス――

        ソレは、もう一つの意味を人々に刻んだ。
        ―― "xellot" the loss ――
        ゼロという喪失。
        指導者を失った人々は、まだ名さえなかった 此の国を"ロス"と名付けた。
        信じ従った"ゼロ"ではなく、"喪失"という言葉を選んだ。

        この地は太古に"喪失"を学んだ。
        この国は「大切なモノが何であるのか」を知っている者たちが支えている。
        だから、誰もが誰かの「大切」を守りたいと願う。
        その"誰か"は、他の誰でもない自分のコトなのだから。
        他人の云う「誰か」は"自分"のコトだ、と知っているから。

        その枝に手が届かなければ、
        誰かが抱き上げて、風船の糸を掴ませてやる。
        そんな優しさと温かさが、この国を守っている。


      「そうか…。
        アンタを"大事"だと思ってたんだ」
        今更 気付いた。
      「大切だったんだ…。
        今まで ずっと……今だって…」
        口にした途端、生まれ変わったみたいに目の前が拓けた。
        記憶の奥で老翁が にやりと笑った。

        …そんな気がした。



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