舞台袖;『起』


index story 06;クラスター グリッサンド


   夜、世界中に響く音がある。
   耳を澄ましても聴こえない程、小さい。
   月が歌う。
   鋼琴の音色。
   
   或る晩、ふと思った。
   自分以外に、誰がこの音に気付いているのか…。
   
   あの海で交わした盟約が痛む。
   幾度となく触れてみるが、やはり左目はない。
   
   幼い頃の記憶もない。
   首に掛けたIDタグは、本当に「過去」の存在を示す証跡(モノ)だろうか。
   悪魔に呼ばれて目を覚ました瞬間から、俺の物語は始まった。


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